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企画「あなたのマイ〇〇を教えてください」シリーズ1  ?大量生産?大量消費社会を見つめ直す?

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東京外国語大学広報マネジメント?オフィスでは、SDGsの目標に照らし合わせながら東京外大が持続可能な社会の実現のために貢献できることを探る広報企画を進めています。その一環として、2021年10月18日から11月21日にかけて、広報マネジメント?オフィス学生取材班SDGs班は、本学の学生?留学生?教職員を対象に「あなたのマイ〇〇を教えてください」と題したオンラインアンケート調査を実施しました。「マイ〇〇」とは買い物などの際に使い捨ての袋や食器などの代わりに用いる、マイバッグやマイボトルなどの繰り返し使えるもののことです。

アンケートでは「マイ〇〇」を使っているかどうか、そして使っている場合は使い始めたきっかけや使用するメリットなどについて質問しました。ウェブ上でアンケートフォームを公開し、75名から回答が得られました。アンケートではマイボトルやマイバッグなどを使っているという声が多く見られ、中には「マイストロー」や「マイメモ帳」などユニークな回答も見られました。アンケートにご協力いただいたみなさまにはこの場を借りて感謝申し上げます。

本記事ではアンケートにご協力いただいた方の中から、本学総合国際学研究院の篠原琢(しのはらたく)教授と言語文化学部4年生の内田美那(うちだみな)さんに追加インタビューを実施し「マイ〇〇」との出会いや使い方、そしてSDGsへの考えについて伺いました。

(※所属?学年等は、2022年1月インタビュー実施当時のもの)

インタビュー対象者

  • 大学院総合国際学研究院?篠原 琢 教授
  • 言語文化学部4年?内田 美那さん

インタビュー担当者

  • 言語文化学部4年?朝妻亮子(あさづまあきこ)さん(篠原琢教授へのインタビューを担当)
  • 国際社会学部3年?中野夢乃(なかのゆめの)さん(内田美那さんへのインタビューを担当)

記事作成担当

  • 大学院総合国際学研究科博士前期課程2年?戸島毬絵(とじままりえ)さん

篠原琢教授の曲げわっぱ弁当箱

10年以上の付き合いの曲げわっぱ弁当箱

——お弁当箱を長く使われているようですね。詳しく聞かせてください。

秋田県の伝統工芸品の曲げわっぱをもう10年以上使っています。もともと伝統工芸品が好きで、曲げわっぱの佇まいの美しさに惹かれて購入しました。使っていくうちにどんどん好きになっていきました。

お弁当の中身が入ると曲げわっぱの表情も変わります。そうするとお弁当を作る楽しみもできて、工夫してお弁当を作るようにもなってきました。また使っていくうちにいいところにもいろいろ気がついてきました。例えば曲げわっぱはプラスチックと比べて熱や水分がいい具合に飛ぶので、ごはんが美味しく仕上がります。そうして使っていくうちに曲げわっぱのいろいろな表情を見て、「これは壊しちゃいけない」と思うようになりました。そうすると大事に手入れして使うようになってきました。

——伝統工芸品は他の市販の製品と比べると長持ちしますか?

もちろん曲げわっぱのいいところはたくさんあります。しかし伝統工芸品だから良くて、安いものだから駄目というわけではないと思います。プラスチックのお弁当箱に対して、愛着がわくこともあると思います。どちらにせよ、長く付き合えば大事に使うようになるのではないかと思います。私の場合はたまたま曲げわっぱ弁当箱だったというだけで、使っていくうちに好きになるということは、伝統工芸品ではなくてもあると思います。

でも安い物だと、心のどこかで「安いから壊れてもなくしてもしかたないや」と思うことが、もしかしたらあるかもしれないですね。

使ううちに好きになる?モノとの「やりとり」

お弁当箱の他にも、傘も長いこと使っています。今使っている傘は、もう10年以上使っています。その傘も最初から好きだったというよりは、長く使っているうちに思い入れが出てきたように思います。そういえば最近、財布なくしてしまいました。その財布は東ドイツの信号機のキャラクター「アンペルマン」の財布で、2000円くらいで買いました。少しボロボロになりかけていましたし、こんな年齢でそんな財布使っていいのか、とも思いますが(笑)でもやっぱり長いこと使ってきたため、なくしてしまった時はショックでした。

——物持ちがいいんですね!長く物を使う秘訣などありますか?

出会いがどんなものでも、長く使わないともののよさはわからないと思います。弁当箱はおかずを作って中に入れてみよう、今度はこんな風に入れてみようとか、そんな気持ちにさせてくれます。傘だってそうですよね。雨が降ったらこんなかっこうでこんな服を着ようとか、そんな気持ちが湧いてくるのかもしれない。長く大切に使おうと思うのは、そういったモノとの「やりとり」があるからです。こんな長く使っているモノに、情けない思いはさせちゃいけない。

「SDGsだから」長く使う?

——SDGsに絡めてお話しすると、一つのものを大事に使うことは、廃棄の削減につながり、大量消費とは違う消費のあり方につながるかもしれないと思いました。

月並みな言い方になりますが、1000円のお弁当箱を10個買うより、1万円のお弁当箱を1個買って長く使った方がいいかもしれません。ただお金の問題もありますし、高価なものはそう簡単には買えないかもしれませんが。

それに買っていざ使ってみたら、嫌いなものだったということもあると思います。SDGsを考えて、長く使わなければいけないと強迫観念になるのも違うのではないかと思います。ただ私は新しく物を買う時に「5年後も持っていてどうか」と考えてから買うようにしています。学生の皆さんは好みが変わることもあると思いますし、皆さんに「そうしなさい」というわけにはいかないでしょう。

——私たち学生世代の間では、伝統工芸品を日頃から使っている人があまり多くありません。伝統工芸品のいいところを教えてください。

伝統工芸品のいいところは、誰が作ったかがわかるところでしょうか。旅先で出会って作っている様子が見られるかもしれないし、もし話を聞くことができたら、材料がどこから来るかなどもわかります。

——生産者の顔がわかるということですね。消費者も自分が購入する商品の環境に与える影響などを把握する必要があるという「責任ある消費」の必要性もよく耳にします。その点、伝統工芸品は透明性が高く、消費者の「責任ある消費」にも結びつきやすそうですね。

そうですね。一つの工芸品にはたくさんの人と産業が関わっています。その工業品の産地が消滅するというのは、それに直接関わる職人たちがいなくなって技量、文化が永遠に失われるだけでなく、その背後で産業を支える世界も消え去ることを意味します。伝統工芸品を使うということは、自分が語りかけるモノをそばにおくことでもあり、同時に産地、地域を支援することでもあるのかもしれません。作った人を個人的に知らなくても、ものが作られる場所や工程がわかると、モノとのやり取りや会話もしやすいですよね。

——最後に読者の方へメッセージをお願いいたします。

使っているうちにどんどん好きになり、佇まいをずっと見ていても飽きない。こちらが働きかければ必ず何か返ってきて、モノとのやりとりが生まれる……そのやりとりがモノを長持ちさせるのかもしれませんね。

いいものだから持つというよりも、そういう気持ちになれば大事に使うのではないでしょうか。伝統工芸品は特に対話がしやすいと思います。みなさんも旅先などで何かを見つけたら、ぜひモノとのやりとりを楽しんでください。

内田美那さんの傘袋

マイ傘袋との出会い

——雑貨屋で傘袋を購入して使い始めたとのことですが、購入前から傘袋を使ってみたい気持ちはありましたか?

いいえ。雑貨屋で見つけるまではマイ傘袋というものがあるということを知りませんでした。見つけた時も実用性よりもデザインに惹かれました。和風とモダンが合わさった、どんぐり柄のデザインでした。

袋の先の小さな穴から傘の先端を出して使います。紐もあるので、肩にかけて持ち運べます。折り畳み傘用も持っていて、これは家族からのプレゼントでもらいました。中がマイクロファイバーでできているため、濡れた傘を入れてもすぐに水を拭き取ってくれるので便利です。

折り畳み傘は日傘と兼用で使っているので、この折り畳み傘用の袋はいつも持ち歩いています。長い傘用の袋は天気予報を見て、雨が降りそうなときに傘と一緒に持ち歩き、雨が降った後の電車の中や、ショッピングモールなどで使っています。特に満員電車の中では、人に傘が当たるのは避けられないと思いますが、傘袋を使うと自分も周りの人も濡れずにすみます。

ちなみに折り畳み傘用の短い傘袋は、ペットボトルカバーとしても使えます。夏場に冷たいペットボトルをこの傘袋に入れると、傘袋の中のマイクロファイバーが結露を拭き取ってくれて、バッグの中が濡れません。

——環境に配慮した行動を始めようとしても、いざ行動するまでにハードルを感じてしまうかもしれません。その最初の一歩を解消するのが、商品のデザインや便利さなのかもしれないですね。

マイバッグを持っている人は主流になっていますが、デザインが可愛いから使うという人も多いですよね。私の傘袋もそうですが、デザインで訴えられることも大きいかなと思います。例えば今マスクがファッションの一部になっているように、傘袋もファッションの一部になるといいですね。

傘袋普及のために

——今はまだ傘袋を使っていない人が多いと思います。より多くの人に使ってもらうためにどうすればいいと思いますか?

私もお店で出会うまで、傘袋という物を知りませんでした。SNSや記事で取り上げて、多くの人に知ってもらうことが大事だと思います。またお店側の取り組みとして、雨の日にマイ傘袋を使うとお買い物の時にポイントをつけるなど、何かしらインセンティブをつけると、多くの人が使い始めるきっかけになると思います。そうすると雨の日でも外に出歩こうと思いますよね。感染症対策もあり今はまだ難しいですが、そのような取り組みがあれば、今後晴れの日だけではなく雨の日のお出かけの楽しみもできますね。

——誰かに傘袋を勧めたエピソードはありますか?

折り畳み傘用の袋は家族からもらったものですが、家族は環境に配慮しているからというよりも、私が好きなデザインだから贈ってくれました。そして今度は、私が家族に好きなデザインの傘袋をお返ししたりしています。他にも身の回りの人に、お土産やちょっとしたプレゼントとして傘袋を贈っています。そうして実際に使ってもらって、初めて便利さに気づいてくれるのではないかと思います。

環境問題について?「消費は投票」

——マイ傘袋を使い始めてからビニールの袋は使わなくなりましたか?

これに出会ってから、いかにビニールの傘袋でプラスチックゴミが出ているかを考えるようになりました。一人の小さな努力ですが、傘袋を持ち歩くだけで環境に配慮できているかなと思います。

——傘袋以外にプラスチックゴミは気にされていますか。

最近になって気にかけるようになりました。例えば、カトラリーセットを持ち歩いて使い捨てのスプーンやフォークを使わないようにしています。

また「消費は投票だ」という言葉を聞いてから、環境に配慮している商品をできるだけ選ぶよう意識しています。例えば包装に使われているプラスチックの量ができるだけ少ない商品を買うようにしています。ただ、プラスチックゴミが少ないという理由で買っていることが、お店やメーカーに伝わりづらいと思うので、スーパーマーケットのお客様アンケートで意見を伝えるようにしています。まだお店からの反応は特にないですが、根強く続けていこうと思います。

あとは商品の売り上げの一部を森林再生など環境保護活動に当てている商品やフェアトレード商品があったら、少し高くてもそちらを選んだりします。あまりにも高額だと購入も難しいですが、他の商品と比べて1割程度高いくらいなら、環境や人権に配慮した製品を買いたいです。チョコレートなど、安い商品ならもう少し高くても購入します。少し値段が上がったとしても、その値段は自分が環境や人権に貢献できる付加価値だと思うと損をした気にはなりません。

——最後に読者に向けて一言お願いします。

私を含め、環境問題についてすでに行動している人が、知人や家族にメリットを伝えてアピールすると影響を与えられるのかなと思います。行動している人が周りに働きかける努力も必要だと思います。

編集後記
アンケート調査を行ったところ「マイ〇〇」を使い始めた理由としてSDGsを挙げる人は少数派で、経済的理由や日々の生活の質の向上について言及している人の方が多いことがわかりました。この結果から調査メンバー一同は「マイ〇〇」を取り入れることで生活がどのように変化するのかに興味を持ったため、インタビューではSDGsに関する話だけではなく「マイ〇〇」がある暮らしにも着目してインタビューを行いました。
大量消費や大量廃棄を前提とした暮らし方に疑問を持つことが、SDGsについて考える第一歩だと思います。本記事でみなさんがサステナブルな暮らしについて考えるきっかけになれば幸いです。(記事作成担当:戸島毬絵)インタビュー後記内田さんのお話を伺い、環境問題について頭で難しく考えるよりも、まずは行動してみるという姿勢が大切だと感じました。環境意識が特段高いわけではなくとも、デザインがきっかけとなってマイ傘袋を使う習慣が身に付いたという内田さんのように、身近なメリットに惹かれて購入したものが結果としてエシカルな消費に結びつくこともあるというのは斬新な視点でした。使い始める動機は「環境への配慮」でなくてもよいということを知れば、消費行動を変えることへのハードルが取り払われるのではないでしょうか。(インタビュー担当:中野夢乃)インタビューにご協力くださりありがとうございます。「伝統工芸品」と聞くと高価なモノであるというイメージがありました。ですが、もともとは一般的に使われていたものであり、大量消費を前提とした安価なモノの流入の結果、伝統工芸が衰退し工芸品の希少性が上がったという点に衝撃を受けました。他国の安価かつ便利な製品に助けられることは多いですが、画一的な製品が浸透する裏側で、日本の特性や良さを活かした製品が徐々に減っていってしまいます。消費における私たちの選択が環境を守ることだけでなく、ゆくゆくは自国の文化を守ることにもつながるという認識をもつことが大切だと感じました。今回の記事が一人でも多くの人にとって消費とモノについて向き合うきっかけになれば幸いです。(インタビュー担当?朝妻亮子)

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